【福島県】食器|大堀相馬焼陶吉郎窯
〇大震災を乗り越えての継承
大堀相馬焼陶吉郎窯の始まりは約300年前。もともとは初代近藤平吉が京焼楽焼を修行し、江戸で楽焼師として創業しました。二代目の近藤陶吉郎は福島・三春で楽焼を焼いていましたが、相馬に移り大堀の地に根を下ろし、大堀相馬焼をより発展させました。
脈々と歴史が受け継がれる中、東日本大震災が発生。陶吉郎窯のある浪江町は避難区域となり場所移動を余儀なくされ、窯元も半数にまで減ってしまいました。しかし、場所は変われど精神上は変わらずに近藤学さんと賢さんの親子二代で焼き物に取り組み続けています。
〇使われた先まで見据えたデザイン
震災による避難の影響で、地元相馬の原料を使うことができなくなってしまい、原料を変更しましたが、製法は伝統に基づいています。またデザインは時代に合わせて変化させ、使う方に好きになって使って頂けるよう、こだわって製作しています。今回の掲載商品についても、こだわりが詰め込まれたもの。お猪口は変形のお猪口。賢さんなりのこだわりで、自然の情景を表しています。水の流れ、風の動き、目に見えないものを器に転用して製作。賢さんご自身が気に入ったデザインで製作することが大前提。心から良いと思ったものを使う方にも理解して頂き、使って頂きたいと考えています。
そのような想いで作られた器によって、食卓が華やぎ、美味しく食べられたり、気持ちが前向きになったりする。例えばビールを飲むならこのようなデザインのものでこう飲むのかな、と使われる場面を想像して製作しています。器が使われた先まで意識されているからこそ、こだわりが詰め込まれたデザインになるのです。
〇登窯で手間隙かけて焼き上げる
どの作品も気に入って製作しているからこそ、製作した作品は全てがお気に入りですが、登窯で焼いた作品は特に気に入っているそうです。
登窯とは、赤松の薪を燃料として焼き上げる、陶吉郎窯様の特有の窯です。赤松が燃えて灰になり、器に付着し、高温で溶けてガラス質になる特徴的なデザインになります。
ガスの窯で焼くと1〜2日間で焼き上がりますが、登窯で焼くと1週間かかります。さらに、薪をくべるなど調整が必要になるため、お二人で交代しながら窯に居続け、手間をかけて焼き上げます。その手間があるからこそ、見ていてうっとりするような透明感のある焼き物が出来上がるのです。
〇取材者より
賢さんからお話を伺っていると、焼き物への情熱と好きな気持ちがひしひしと伝わってきました。大変なことがあるかどうかをお聞きした際、「焼き物好き。大変なこともあるけれど、楽しくてデザインすることも苦ではない。好きだから始めたし、好きだから続いている。その気持ちを皆さまにお伝えしたい」と語ってくださいました。
熱い想いで作られた器で飲むお酒、食べる食事は一際美味しいだろうな、と感じました。展示会や出張販売もあるそうなので、実際に拝見して使わせていただきたいと思います!(取材・文:鈴木悠紀)
◆会社情報
サイト:大堀相馬焼陶吉郎窯 近藤学 近藤賢 (toukichirougama.com)
住所:福島県いわき市四倉町細谷字水俣75-17