福島県(11月お届け)

福島県(11月お届け)

2021/11月/01

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合資会社白井酒造店

〇江戸時代に創業した山廃仕込みがメインブランドの酒蔵

合資会社白井酒造店は、江戸時代中期から操業している造り酒屋です。5代目が兵庫県の灘に修行に行き、当時東北にはなかった日本酒の精白工程の製法を学んで持ち帰り、酒造りに活かしています。また福島県では珍しい「山廃」という方法でお酒を造っています。天然の乳酸菌を使用するこの造り方により、複雑な味わいが楽しめるお酒が出来上がります。この製法を活かした「風が吹く」、「宮川屋 萬代芳(みやがわや ばんだいほう)」などが看板商品です。 

〇震災後に楢葉町の復興を願って製造された「楢葉の風」

2011年の東日本大震災及び原子力発電所の事故により、楢葉町の多くの町民は姉妹都市である会津美里町に避難を余儀なくされました。白井社長は楢葉町の農業が受けた甚大な被害について聞き、楢葉町の基幹産業である農業が一刻も早く復興することを願っていました。その様な折に、楢葉町の復興を目指す中で楢葉の酒づくりプロジェクト委員会が発足し、楢葉町で酒米づくりに挑戦することに共感をし、白井酒造店が酒造りで協力をすることになりました。楢葉町でつくられた酒米「夢の香」を使用して造られているのが、「楢葉の風」です。 

〇楢葉町の農業を応援しながら「楢葉の風」を多くの方にお届けしたい

 白井酒造店では「楢葉の風」を造るにあたり、初めて浜通り(=福島県にある三地方のうち、海沿いの地域)のお米を使用しました。作り手の見えるお米を使って醸造すると決めているそうで、様々なお米の中でも「楢葉の風」に使用している楢葉町で作られた酒米の「夢の香」は質が良く、いいお酒が作りやすいそうです。純米大吟醸のため、甘味はもちろん、香りにふくらみを感じる特徴を持ったお酒になるそうです。「夢の香」を作っていらっしゃる生産農家の猪狩さんは、「いかにお酒に適した酒米を作るのか試行錯誤をしながら、行政と一体となって農業を進めていく」とおっしゃっていました。
 白井酒造店の今後の目標は「楢葉の風」の生産本数を増やし、より多くの方にお届けすることです。白井社長は「魅力にあふれる日本酒を製造することで、楢葉町での農業振興の力になりたい。」と語ってくださいました。

〇取材者より

 質の高いお酒をつくるには、原料となる酒米が重要であると学びました。お米を作る農家さんの苦悩や、醸造に携わっている方たちの想いが「楢葉の風」に詰まっていると思います。たくさんの方に「楢葉の風」をご賞味いただき、楢葉町に興味を持っていただければと思います。(取材・文:神埼寧)

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福島紅葉漬株式会社

〇福島紅葉漬株式会社と阿武隈の紅葉漬の誕生

福島紅葉漬株式会社は、1963年(昭和38)に設立されました。
それまで紅葉漬は、県北地方の魚屋各店が独自の製法でそれぞれ作っていた保存食でした。ところが福島紅葉漬株式会社の創業を機に、全国の人々に向けて町の名物として販売していこうと話がまとめられ、今に至ります。
福島県の県北地方阿武隈川流域では新鮮な鮭が多く漁獲されていました。この地域では秋に開催されるお祭りで、鮭を使ったごちそうを食べるのが昔からの風習です。また、福島県は土地が広く海沿いだけではなく内陸部もあるため海でとれる魚がなかなか手に入りません。一方で、阿武隈川の流域では鮭が大量にとれますので、福島の方々は海の幸のかわりに、川の恵みを加工して食べていました。とはいえ昔は、食品を保存するための冷蔵庫がない時代です。先人は、阿武隈川流域でとれる鮭をどのように調理し保存すべきかと、試行錯誤を重ねました。その結果誕生したのが、生鮭と麹を使用した阿武隈の紅葉漬です。

〇昔ながらの手作業でつくられている紅葉漬 

 紅葉漬は、漬けこみの段階に鮭の皮まで使用するという、昔ながらの製法でつくられています。魚の皮をはいだり、魚を裁断したりする作業以外はすべて手作業です。たとえば魚の身おろしや骨とり、撹拌、漬けこみは手作業によって行われます。鮭と麹と塩を混ぜあわせる「撹拌」の作業では、直径60cmから70cmにもおよぶ金属製のたらいのなかで、材料をかき混ぜています。創業当時からほとんど変わらぬ製法でつくられてきた紅葉漬。あえて変わった点をあげるのであれば、漬けこみに用いる「たる」が変更されました。
 以前は鮭を漬けこむのに、陶器製の焼酎がめを使用していましたが、今は1度により多くの鮭を漬けこむため、20kgのポリタンクに入れています。材料を漬けこみ、熟成するまでに要する期間は2カ月ほどです。とはいえ日数はあくまでも目安で魚の漬けこみ具合を見て、次の工程に移るかどうかを判断しています。ひと樽、ひと樽に真心をこめて製造された紅葉漬は、鮭と麹の香りを存分に楽しめる絶品です。お酒のおつまみとしてだけでなく、炊きたてのご飯に紅葉漬を入れるのもおすすめです。

 

〇安心・安全をモットーに、今後はあらたな商品を開発する 

 製品づくりにおいてのモットーは「安心・安全」です。計量や袋づめは手作業でおこなうほか、鮭の熟成具合を常に目視で確認しています。日頃から従業員に対し、年間に何千、何万個と商品を製造していますが、お客様に届くのはそのうちのひとつ。それが全てであると伝えているそうです。このように品質管理を徹底し、厳しい審査に合格した商品のみが市場に出ています。今後は看板商品・紅葉漬以外にも、セカンドラインを開発していくとのことです。そのため、新たな商品を作るにあたって、食品やパティシエなど異業種の人たちと意見交換をしています。これからも、異業種の人やお客様からのあらゆるご意見を吸収し、老若男女に愛される商品づくりを心がけていきます。 

〇取材者より 

 江戸時代から伝わる紅葉漬は、先人の知恵によって誕生しました。最初に商品が開発されてから今に至るまで、さまざまな苦悩があったと思います。取材をしてくださった大竹様をはじめ、福島紅葉漬株式会社のみなさまが、製品と向き合うひたむきな様子に胸をうたれました。ひとりでも多くの方々に、紅葉漬の魅力が伝わっていけばいいなと思います。 (取材・文:神埼寧)

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株式会社ハム工房都路

〇本場ドイツで認められたハム・ソーセージ

 ハム工房都路は、1997年に現在の福島県田村市内にある都路村で創業しました。2011年に東日本大震災の影響を受け2年間の休業を余儀なくされましたが、2013年に市内へ移転し営業再開。今日まで、地元の方から愛され続けています。自然豊かな牧場で育てられた国産「やまと豚」を使用し、ドイツ製法で作るハムやウインナーは、本場・ドイツで行われるDLG(ドイツ農業協会)食品競技会にて、最上位である金賞を連続受賞されています。

 

〇豚肉の旨味とチーズのコラボレーション 

 粗びき生地にモッツァレラチーズをたっぷり練り込んだ「チーズウインナー」は豚肉の旨味に加え、濃厚なチーズの甘味が楽しめます。お召し上がり頂く際は、ボイルもしくはオーブンで温めていただくのがおすすめです。一口かじると、チーズがトロリと飛び出すようになります。日本酒はもちろん、ビールや焼酎などにもぴったりです。 

〇福島県で1番おいしいハム工房を目指して

 ハム工房都路では、14名の従業員とやまと豚を育てるグループ企業・株式会社フリーデンがチーム一丸となり、日々商品をひとつひとつ丁寧に製造しています。上質な甘味と柔らかさが特徴のやまと豚の素材を最大限に活かし、「おいしい」と言っていただける一品をこれからも愛情込めてお作りし続けています。福島県で1番美味しいハム工房を目指し、これからも全国のお客様にこだわりのハム・ソーセージをお届けしていきます。

 

〇取材者より 

 東日本大震災の影響を受けて、2年間、休業をしていましたが、よりおいしいハム・ソーセージを作りお客様のもとにお届けしたいという強い想いを感じました。従業員の皆さまが一丸となって事業再開ができたそうです。想いを込めて大切に作られたチーズウィンナーが全国の皆さまにお召し上がり頂ければいいなと思いました。(取材:神埼寧、文:下浦まいこ)

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株式会社オクヤピーナッツジャパン

〇3つの経営理念 

 今回、取材に応じてくださったのは松﨑代表取締役と契約農家である山本裕子さんでした。
 株式会社オクヤピーナッツジャパンは、御用聞きから豆菓子加工販売会社を経て農業法人として2020年の4月に出来ました。「健康で美味しい日本豆食文化」を伝える心、「地域農業・産業」に貢献する心、「豊である努力」の上、人に尽くす利他の心の3つを経営理念として掲げており人々と繋がり紡いでいく絆を大切にしています。

 

〇保存料なしの保存食 

 塩で茹でるだけで保存料が入っていない粒が大きな塩ゆでピー。40gと食べきりサイズの大きさです。パウチに入っており常温でも一年もち、おつまみだけでなく保存食としても置いておくことができます。そして何よりも驚きなのが、このピーナッツ全てが手作業で剥かれています。松﨑代表取締役曰く「手剥きの美味しさが一番引き立つ」とのことです。

 

〇会津の土地だからこその美味しさ 

 会津の土地は、冬に雪が多いため一毛作になってしまいますが、その雪の多さのおかげで水が美味しく土地が肥沃だと松﨑代表取締役は言います。また、契約農家である山本裕子さんはオススメポイントとして会津の落花生は味が濃くジューシーと教えてくださりました。会津の落花生を広げていきたいと松﨑代表取締役は力強くおっしゃっていました。

〇取材者より

松﨑代表取締役は農福連携にも力を入れており、冬には仕事がなくなってしまう障がい者をどのように雇用するべきか、震災後風評被害に悩む会社にどう貢献できるのかを真剣に考えて行動しており美味しさと同時にこの商品を買いたいと思わせてくださいました。(取材:神埼寧、文:岡ひかる)

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株式会社ももがある

〇一番おいしい「完熟もも」を食卓へ 

株式会社ももがあるは、2016年設立。
東日本大震災で閉鎖が決まっていたいかにんじんの加工場を買い取り、従来のいかにんじんの製造に加えて、福島県のももを使った商品開発をスタートしました。瞬間冷凍することで、旬の完熟もものパッケージに成功。食品添加物を一切使用せず、素材の旨味を活かした商品を全国に届けています。福島県の農家さんをパートナーとし、女性が活躍できる会社作りにも力を注いでいます。

 

〇お箸が止まらなくなる癖になる味わい 

 いかにんじんは福島県のソウルフード。食感の良いにんじんに、スルメイカのだしがしっかり染み込んでいます。
 福島県は土地が広く、海沿いだけでなく内陸もあるため、漁師が生のイカではなく干したスルメイカを使ったことで誕生しました。お酒のおつまみとしても人気で、ご飯に乗せたらお箸が止まりません。大手お菓子メーカーの社長は福島県出身で、いかにんじん味のポテトチップスを発売。ももがあるのいかにんじんの味をモデルに商品開発が行われました。いかにんじんは東北ならではの食文化ですが、全国の方々の味覚に合うように作られています。にんじん嫌いの子供も食べられる、癖になる味わいが魅力です。

〇添加物ゼロの昔ながらの製法を守る 

 いかにんじんは昔ながらの味と製法を守り続け、ひとつひとつ丁寧に手作りしています。
 添加物を使わずに、素材の味をどう活かすかがテーマです。パッケージは思わず手に取りたくなる元気な色にしています。漬け物は長持ちさせなければならないので、無添加を使った商品はあまり見かけなくなりましたが、昔ながらのレシピを踏襲することで、保存のきく無添加の漬け物は作ることができます。技術として残せるものを残しながら、同じ味を保つことができるように努力を続けています。

 

〇取材者より

製品の味はもちろん、パッケージにもこだわっている点が素敵だなと思いました。私が商品を購入する際には見た目を重視します。ももがある様の商品は思わず手に取ってじっくりと見たくなる色や柄です。取材をさせて頂いた齋藤さんの「桃のテーマパークを作りたい」という夢が叶うように祈っています。(取材:神埼寧、文:田中絵里)

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株式会社香精

〇下郷町に絶好の耕作地を見つけ、高菜づくりがスタート 

 前職で漬物の原料を仕入れていた社長が、あらたに漬物会社を設立して1年後。 香精は1991年に株式会社化されました。事業のターニングポイントは、東日本大震災が発生する2、3年前のこと。社長は起業する際に、高菜を育てるため、あらゆる場所を訪れては、耕作に適した場所はないかと探していました。
 あるとき、社長は福島県の下郷町に畑があると耳にしました。下郷町は気候の寒暖差が激しいため、絶好の耕作地です。そこで社長は下郷町で高菜づくりをスタートさせると決意します。それから震災後に、小学校の跡地を改築し下郷工場が完成。高菜や白菜の漬物、エゴマごぼうの製造が始まりました。

 

〇老若男女に愛される、エゴマごぼうのこだわり2つ 

 エゴマごぼう作りにおいては、大きく分けて2つのこだわりがあります。1つめはエゴマの加工方法です。エゴマとは、ごまのように小さな実のこと。油分が多く、香ばしいのが特徴です。また福島県下郷町の特産物でもあります。
 エゴマごぼうを製造する際は、素材本来の風味が落ちないように、油を飛ばして香りを引き立たせる「から炒り」の工程が重要です。エゴマを絶妙な炒り具合に完成させるため、炒る時間や感覚を大切にしています。
 2つめのこだわりは、エゴマとかけあわせるゴボウの硬さです。本来であれば、ゴボウはやわらかく加工したほうが食べやすいかもしれません。ところが同社の場合は、ごぼうならではのカリカリとした食感が残るよう加工してあります。理由は、ごぼう独自のクリスピーな食感を楽しんでもらうためです。
 エゴマごぼうは、老若男女問わず人々から愛されている商品です。
 インタビューを受けてくださった児山さんが2歳の甥のもとへ、エゴマごぼうをお土産に持っていったところ「おいしい」と喜んで食べてくれたのだとか。大人だけでなく小さな子どもにも食べやすいよう、甘い味つけがされているのも魅力です。

 

〇今年の目標はグランプリ!ゆくゆくは海外進出を目指す 

 同社が手がけるエゴマごぼうと甘酒は、満天堂のコンペティションにおいて準グランプリを受賞しています。満天堂とは、福島県から依頼を受けて県内のおいしいものを発掘し、広めていく活動をしている団体のことです。
 「今年こそは、最優秀賞であるグランプリを獲得したい」と児山さん。
その思いがたくさんの人に届くよう、児山さんをはじめ同社の皆さまは、真心をこめて漬物づくりにいそしんでいます。
 社内では、商品を開発する過程で社員が集まって、お互いに意見を出しあっているのだそう。より良い商品を世に送りだすための大切な時間です。「ゆくゆくは海外進出できるような、賞味期限の長い商品を作りたいです」。そうお話ししてくださった児山さんの目は、輝いていました。 

〇取材者より 

エゴマの風味を活かすために重要な「から炒り」の工程が大変そうだと思いました。また、あえてゴボウをやわらかくせず硬くする製法にこだわりを感じます。ひとりでも多くの方に記事を読んでいただき、エゴマごぼうの存在を知っていただきたいです。 (取材・文:神埼寧)

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会津ブランド館

〇地元の素材を活かした商品開発 

 会津ブランド館では、会津という地域に根ざした素材を使って加工食品を製造販売しています。10年程前から商品開発事業をスタートし、店舗2階の自社工場で「カップこづゆ」を始め、日々多くの商品を開発製造しています。他地方ではなじみの少ない「会津ソースカツ丼のソース」など、地元で愛されている商品もお勧めとのこと。また、店舗では食品に限らず会津の工芸品なども数多く取り揃えてあり、見て食べて使って会津を感じていだけるような品が満載です。 

 

〇会津の郷土料理を身近に手軽に 

 福島県会津地方でお正月や結婚式、仏事の席で振舞われてきた郷土料理「こづゆ」。貝柱で取っただしに、細かく切ったきくらげ、里芋、ニンジンなど多くの具材が入ったおもてなし料理です。江戸時代からあるというこの料理を、お手軽にお湯を注いで楽しんでもらえる形で製造販売しているのが、会津ブランド館です。地元西会津町産のきくらげを使い、郷土料理の「会津」を楽しめる食べ物です。

〇会津に想いを寄せて

 お話を伺った藤田館長は加工食品の商品開発、製造、パッケージのデザイン、そして販売まで全てに携わっていらっしゃいます。実際に手に取られるお客様のことをイメージして作り、直接お客様の声を聞くことができる。それが嬉しく、やりがいがあることだとお話されていました。「商品を通して“会津”を感じていただき、行ってみたいと思っていただける商品を作っていきたい。今後は会津だけでなく福島全体を扱う商品を作っていきたいと思います」と今後の展望を語ってくださいました。 

 

〇取材者より 

 取材させていただいた「会津ブランド館」は、会津の特産品や郷土料理が数多く並んでおり「ここにしかないもの」「ご当地で作られているもの」を求めておられる方にも満足いただける品々ばかり。「生産者様やお客様からの依頼で様々なことに挑戦し、新たな商品を並べることができるのが楽しい」と嬉しそうに話されていた藤田館長の姿が印象的でした。(取材・文:井上いほこ)

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大堀相馬焼陶吉郎窯

〇大震災を乗り越えての継承 

 大堀相馬焼陶吉郎窯の始まりは約300年前。もともとは初代近藤平吉が京焼楽焼を修行し、江戸で楽焼師として創業しました。二代目の近藤陶吉郎は福島・三春で楽焼を焼いていましたが、相馬に移り大堀の地に根を下ろし、大堀相馬焼をより発展させました。
脈々と歴史が受け継がれる中、東日本大震災が発生。陶吉郎窯のある浪江町は避難区域となり場所移動を余儀なくされ、窯元も半数にまで減ってしまいました。しかし、場所は変われど精神上は変わらずに近藤学さんと賢さんの親子二代で焼き物に取り組み続けています。

 

〇使われた先まで見据えたデザイン 

  震災による避難の影響で、地元相馬の原料を使うことができなくなってしまい、原料を変更しましたが、製法は伝統に基づいています。またデザインは時代に合わせて変化させ、使う方に好きになって使って頂けるよう、こだわって製作しています。今回の掲載商品についても、こだわりが詰め込まれたもの。お猪口は変形のお猪口。賢さんなりのこだわりで、自然の情景を表しています。水の流れ、風の動き、目に見えないものを器に転用して製作。賢さんご自身が気に入ったデザインで製作することが大前提。心から良いと思ったものを使う方にも理解して頂き、使って頂きたいと考えています。
 そのような想いで作られた器によって、食卓が華やぎ、美味しく食べられたり、気持ちが前向きになったりする。例えばビールを飲むならこのようなデザインのものでこう飲むのかな、と使われる場面を想像して製作しています。器が使われた先まで意識されているからこそ、こだわりが詰め込まれたデザインになるのです。 

〇登窯で手間隙かけて焼き上げる

 どの作品も気に入って製作しているからこそ、製作した作品は全てがお気に入りですが、登窯で焼いた作品は特に気に入っているそうです。
登窯とは、赤松の薪を燃料として焼き上げる、陶吉郎窯様の特有の窯です。赤松が燃えて灰になり、器に付着し、高温で溶けてガラス質になる特徴的なデザインになります。
 ガスの窯で焼くと1〜2日間で焼き上がりますが、登窯で焼くと1週間かかります。さらに、薪をくべるなど調整が必要になるため、お二人で交代しながら窯に居続け、手間をかけて焼き上げます。その手間があるからこそ、見ていてうっとりするような透明感のある焼き物が出来上がるのです。

 

〇取材者より

 賢さんからお話を伺っていると、焼き物への情熱と好きな気持ちがひしひしと伝わってきました。大変なことがあるかどうかをお聞きした際、「焼き物好き。大変なこともあるけれど、楽しくてデザインすることも苦ではない。好きだから始めたし、好きだから続いている。その気持ちを皆さまにお伝えしたい」と語ってくださいました。
 熱い想いで作られた器で飲むお酒、食べる食事は一際美味しいだろうな、と感じました。展示会や出張販売もあるそうなので、実際に拝見して使わせていただきたいと思います!(取材・文:鈴木悠紀)

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